・課題整理のために作成したグラフや地図のうち、特に皆さまにも役に立ちそうなものを公開しています。
・作図の手順やプログラミングコードはnoteで無料で公開しています。
・公開準備のできていない項目があります。今後多くの部分を調整・更新予定です。
・政策を考える為に調査中の先行研究について、エビデンスレベルの高い論文の出典と概要を掲載しています。
オックスフォード大学の研究者らによる、家事分担と出産意向の関連性を調査した論文。2006年と2012年における東アジアの4カ国(中国、日本、韓国、台湾)を対象とした。2006年の東アジア社会調査(East Asian Social Survey)と2012年の国際社会調査プログラム(International Social Survey Programme)の2つのデータセットを統合し、最小二乗法(OLS)と順序ロジットモデル(ordered logit models)を使用して、夫の家事参加と理想の子供数との関連を検証した。2006年と2012年の両方において、夫の家事参加は夫婦双方の出産意向と関連していることが確認された。東アジアにおいて、よりジェンダー平等な家事分担が、より高い出産意向と関連していることが確認された。
日本の子どもの医療について、”無料”の特別な効果を調査した東大の研究者らの論文。医療の無料化は不連続な需要増加に繋がり、医療リソースと財政を圧迫する。無料化は抗生物質の不適切な使用を増加させるが、少額の負担を課すことでこの問題を軽減できる。また少額の価格設定により病気の子供に対して適切に医療リソースが配分できる。医療サービスの無料化は需要に大きな影響を与えるため、政策立案者は無料と有料を戦略的に利用して特定の目的を達成する必要がある。例えば特定の医療サービス(ワクチン接種など)を無料化し、需要を促進することで社会的に有益な効果をもたらせる可能性がある。
教師の科目別の専門資格の有無が、40カ国の14歳の生徒のTIMSS 2015における4科目(生物学、化学、物理学、地学)のテストの成績に与える影響を調査した論文。教師が科目の専門資格を持つ場合、生徒のテストの成績は0.035標準偏差分(=日本で一般的に用いられる偏差値に変換して0.35)増加した。女性や経済的に恵まれない生徒、理科系科目で教育水準の低い国では特に大きな影響がみられた。OECD加盟国、非加盟国ともに科目別の専門資格の有無が有意な効果を持つことが確認され、非加盟国で特に効果が大きいことが示された(0.041標準偏差上昇)。教師が特定の科目に自信を持って教えられることが、この効果の約20%を説明していることが示された。
スウェーデンで実施された全国的な保育料金改革による保育料金の低減が出生率に与える影響を調査した論文。Difference-in-Differencesによる自治体間の比較により保育料金の変化が出生率に与える影響を推定。
保育料金の低減は初産の数を増加させる効果があることが確認された。(将来の)保育料金が1万ドル減少すると、初産の確率が7.5%から9.8%増加した。二人目以降の出産に関しては、保育料金の低減が出産のタイミングに影響を与えることが示された。具体的には、保育料金の低減を見越して第二子の出産を遅らせる傾向が見られた。すでに子供がいる家庭では収入効果による負の影響も見られ、政策立案においては多角的な視点が求められることが示唆された。この研究結果は、保育料金の低減が出生率の増加につながる可能性があることを示しており、少子化対策としての保育料金政策の有効性を支持している。既存の家庭に対する収入効果も考慮する必要があるため、包括的な政策設計が重要であることが示唆される。
Peers with Special Needs: Effects and Policies
2008年から2017年にかけて、スイスのザンクト・ガレン州の中学生の全ての生徒の算数とドイツ語のテストの成績を元にインクルーシブ教育の効果を検証したザンクト・ガレン大およびハーバード大の研究。
特別な支援を必要とする生徒を分離した教室編成は、統合された教室編成に比べて大きな負の影響があることが示された。特別な支援を必要とする生徒を注視した上で適切に統合された教室編成を行うことが、完全に分離した教室編成より望ましいと提案された。